阿蘇の古墳時代

古墳時代の阿蘇人のくらし

遺跡の分布

*豆知識

発掘(はっくつ)調査

遺跡を掘って調べること

墳丘(ふんきゅう)

人を埋葬(まいそう)する墓の範囲に土を積んで高くした部分のこと

墳墓(ふんぼ)

地上に墳丘を備えた人を埋葬するお墓のこと

埋葬(まいそう)施設(しせつ)

遺体(いたい)を納める施設。石棺・木棺のほか、墓壙や竪穴式・横穴式石室などもふくむ

石室(せきしつ)

墳丘の中に造られた石造りの埋葬施設

玄室(げんしつ)

横穴式石室のなかで遺体(いたい)をおく部屋のこと

副葬品(ふくそうひん)

人をほうむるときに、その人が身につけていたものやそなえ物を遺体(いたい)といっしょに埋(う)める品物(しなもの)のこと

19.長目塚古墳(ながめづかこふん)(阿蘇市旧一の宮町) 3-1-08

調査場所:

阿蘇カルデラ内の阿蘇谷の中で、外輪山内壁が岬状に突出している象ケ鼻の麓

黒川上流の鹿漬川と東岳川が合流する低地に展開。東岳川を挟んで東西の両岸に古墳が分布しており、中通古墳群の中で最大の前方後円墳である。

時代: 古墳時代

墳墓:

前方後円墳(墳丘表面には葺石・埴輪列が認められる)

      墳丘周囲には周溝・外堤がめぐらされている

埋葬施設:

後円部に存在が推定される(未調査)

前方部…石棺系石室、床・壁面にベンガラが塗られていた

(埋葬者:成人女性、東頭位)

副葬品:

銅鏡(どうきょう)(内行花文鏡(ないこうかもんきょう))、

鉄刀(てっとう)(鉄の刀のこと 片刃)、

鉄鏃束(てつぞくたば)(鉄族が束になっている)、

刀子(ナイフに似た短い刃物)、

勾玉、管玉、ガラス玉など

墳丘出土品:

須恵器(すえき)、土師器(はじき)、埴輪(はにわ)片

遺跡特色:

1949年河川改修に伴う発掘調査が実施。調査の起因となった河川改修工事が水害をきっかけとした災害緊急対策として計画されたにも関わらず、古墳の保護か災害対策かという地元住民や関係者の葛藤を乗り越えて、残念ながら前方部を河川改修で切除しなければならない結果となる。

長目塚古墳実測図 内行花文鏡

参考:杉井健ほか.長目塚古墳の研究 : 有明海・八代海沿岸地域における古墳時代首長墓の展開と在地墓制の相関関係の研究.2014.3.熊本大学文学部.

 

20.上御倉(かみみくら)、下御倉(しもみくら)古墳(阿蘇市旧一の宮町) 3-1-09

調査場所: 国造神社境内に隣接する2基の円墳
時代: 古墳時代
墳墓: 円墳2基

【上御倉古墳】

埋葬施設:

石室内…横穴式石室

(複室構造・両袖式で溶結(ようけつ)凝灰岩(ぎょうかいがん)を主な石材とする)

玄室…石屋形と2つの屍床がありコの字形の配置

阿蘇国造速瓶玉命(あそのくにのみやつこはやみかたまのみこと)が埋葬されたとの伝承がある

副葬品:

直刀(ちょくとう)(そりがない刀のこと)、刀子片

墳丘出土品:

須恵器(すえき)片

*現在下御倉古墳は天井下面まで土砂が流れ込んでいるため石室内に立ち入ることができない

上御倉古墳石室内断面図 
上御倉古墳正面入口 

参考:杉井健ほか.阿蘇地域を中心とした古墳時代の九州島における情報伝達・文物交流の実証的研究.2014.熊本大学文学部.

 

21.柏木谷(かやのきだに)遺跡(南阿蘇村旧久木野村)3-1-04

調査内容:

県営圃場整備事業(阿蘇久石地区)にともなう調査

時代:

縄文時代~古墳時代(4~6世紀)

墳墓:

方形(ほうけい)周溝墓(しゅうこうぼ)12基(墳丘のまわりを溝でかこんだ四角い墓)

円形(えんけい)周溝墓(しゅうこうぼ)9基(まるい形の盛り土をして、まわりに溝をほった墓)

円墳1基

埋葬施設:

土壙(甕形土器)、木棺、箱式石棺

副葬品:

須恵器、土師器、勾玉、

鉄剣(てっけん)(鉄のつるぎのこと 両刃)、鉄鏃、刀子

遺跡特色:

縄文時代から弥生時代にかけては集落域として展開、弥生時代から古墳時代になるにつれて墓域へと推移している

円形周溝墓

   箱式石棺検出状況                 (左写真中央拡大図)

参考:江本直.柏木谷遺跡 県営圃場整備事業に伴う埋蔵文化財発掘調査報告.1993.熊本県教育委員会.

 

22.高塚(たかつか)横穴墓群(ぼぐん)(高森町)3-1-10

調査内容:

外輪山の南東部、五ヶ瀬川の最上流域に位置し、宮崎県との県境に接している。1988年に採石場内で偶然発見された

時代:

古墳時代中期末

墳墓:

横穴墓3基

副葬品:

鉄剣(てっけん)、鉄刀(てっとう)、刀子、鉄鏃、

馬具轡(ばぐくつわ)(馬にのるときにてづなをつけるため、馬の口にくわさせる金具)、

辻金具(つじかなぐ)(馬具を付ける時に使うひもなどを取り付ける金具のこと)、

横矧板鋲留(よこはぎいたびょうどめ)

短甲(たんこう)(古墳時代の鉄製のよろいの1つ)

*調査以前土木工事の際に出土

横矧板鋲留短甲

横矧板鋲留短甲実測図

参考:杉井健ほか.阿蘇地域を中心とした古墳時代の九州島における情報伝達・文物交流の実証的研究.2014.熊本大学文学部.

 

23.上の園(かみのその)古墳群(高森町)3-1-23

調査場所:

外輪山上からのびる丘陵上に位置し、1948~49年にかけて調査

時代:

古墳時代

墳墓:

円墳

埋葬施設:

割石小口積みの小型横穴石室、箱式石棺2基

副葬品:

円墳・・・・太刀、銀環、鉄鏃

箱式石棺・・直刀、馬具、須恵器

 

古墳時代全体の参考:

  • 宮本利邦.阿蘇郡における考古学研究の到達点.肥後考古 第23号 肥後考古学会創立90周年記念特集(2).2024.肥後考古学会.引用
  • 特定非営利活動法人むきばんだ応援団.“全国子ども考古学教室”.

 

 

 

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