阿蘇の弥生時代

弥生時代の阿蘇人のくらし

遺跡分布図

*豆知識

遺跡(いせき) むかしの人々が作ったものや使ったものがうまっている場所のこと
発掘調査(はっくつちょうさ) 遺跡を掘って調べること
遺構(いこう) むかしの人々が掘った穴の跡のこと(建物・柱の穴・墓の跡)
遺物(いぶつ) 遺跡で出土した人々の生活を知る手がかりになるもの

12.地蔵原遺跡(じぞうばるいせき)(南小国町)3-1-14

調査のきっかけ:

県道南小国上津江線単県道路改良工事にともなう調査

わかった時代

弥生時代

遺構:

竪穴住居、土坑、

祭祀目的と考えらえる北部九州系の丹塗土器を多数廃棄した遺構を検出。

遺物:

・弥生土器、丹塗土器(にぬりどき)

(土器の表面にベンガラをぬり、あざやかな赤色に仕上げた弥生土器のこと おもに祭祀や葬送の儀式などに使われたと考えられている)

・磨製石鏃(ませいせきぞく)

(石を磨いて作った矢じり)

・敲石(たたきいし)

(手ににぎって物をたたいて割ったりくだいたりする石器のこと)

 

13.宮山(みややま)遺跡(阿蘇市旧阿蘇町) 3-1-05

調査内容:

阿蘇西小学校建設に伴う調査(1971年)

阿蘇西小学校体育館建設に伴う調査(2005~2007年)

わかった時代:

弥生時代後期から終末、古墳時代初頭

遺構:

・小学校建設

 竪穴住居2棟

・小学校体育館建設

 弥生後期後半主体の竪穴住居、掘立柱建物、円形周溝、

 条溝(集落内にある溝のこと)

・小学校正門通路拡張工事

 古墳時代初頭の炭化した部材が残存した火災後の竪穴

 住居1棟、木棺墓1基

遺物:

弥生土器、

炭化米(たんかまい)

(お米が炭になった状態のもの)、

刀子・摘鎌・鉄斧など多数の鉄製品(鉄でできた道具)、

打製・磨製石鏃、磨製石斧、石包丁など多数の石器

遺跡の特色:

弥生時代終末頃に発生したと推測される地震による断層を調査区内で検出。

出土状況:焼失住居址 出土遺物:赤彩土器  出土遺物:弥生土器(甕)

 

14.小野原(このばる)遺跡群(阿蘇市旧阿蘇町)3-1-17

調査内容:

黒川広域基幹河川改修事業小野原遊水地整備にともなう調査

遺跡群を構成する下扇原遺跡と小野原A遺跡を発掘調査。

わかった時代:

弥生時代後期

【下扇原遺跡(しもおうぎばるいせき)】

遺構:

竪穴住居86軒(うち鍛冶(かじ)遺構8軒)、掘立柱建物1軒、円形周溝4基、溝3条、

土壙40基(うち墓葬7基)

遺物:

弥生土器、石皿、磨石、砥石、石鏃、

ピューター製の「銅釦(どうこう)(ボタン)」、

多数の鉄製品、三角鉄片、棒状鉄片

コンテナ24箱分の多量のベンガラ出土

出土遺物:銅釦(どうこう)(ボタン)    左:表         右:裏

弥生土器

【小野原(このばる)A遺跡(いせき)】

遺構:

竪穴住居18軒、土壙7基

遺物:

弥生土器、玉類、石皿、磨石、砥石、石鏃、鉄製品、棒状鉄片、小玉なるガラス製品

遺跡特色:

小野原A遺跡7区より断層及び地震発生直後の状況を検出。約2000年前に発生したM6,8程度の地震と推測

出土遺物:小玉ガラス製品 出土遺物:弥生土器 約2000年前の断層

*豆知識

【ベンガラ(弁柄)ってなんだろう】

阿蘇市赤水に褐鉄鉱(かってっこう)(リモナイトともいう)を産出している鉱山があります。

褐鉄鉱とは、微細粒(びさいりゅう)~土壌(どじょう)の鉄鉱物の集合体で、地元では「阿蘇黄土(あそおうど)」と呼ばれています。クレヨンの黄土色(おうどいろ)は、ここからきています。

阿蘇の褐鉄鉱床(かってっこうしょう)は、カルデラ湖があったときに地下からの熱水や温泉水、ガスなどに含まれる鉄分が、バクテリアなどの作用によって酸化され湖底に堆積したものです。

「阿蘇黄土」を加熱すると酸化鉄ができます。それは「ベンガラ」と呼ばれる真っ赤な顔料になります。その「ベンガラ」は弥生時代からむかしの人々に使われていました(阿蘇谷の古代遺跡から多量に出土しています)。

阿蘇黄土(リモナイト)日本リモナイトHPより ベンガラ

【ベンガラはどんなことに使われていたのかな】

弥生時代・・・土器の表面に塗ってあざやかな赤色土器を作りました

古墳時代・・・お墓の棺を赤色に着色していました

歴史時代以降・・・神社の鳥居などで防虫・防菌剤としてつかわれています

*むかしの人々にとって赤い顔料はとても貴重なもので、「ベンガラ」は他のムラや周辺集落の人々との交易(こうえき)(物をやりとりする経済活動のこと)の物品としても活用されていたと考えられます。

住居跡より大量のベンガラ出土       

(小野原遺跡群より)

棺内ベンガラ埋土状況

(宮山遺跡より)

丹塗土器

(地蔵原遺跡より)

 

15.陽の丘(ひのおか)遺跡(長陽村) 3-1-20

調査内容:

旧長陽中学校駐車場整備工事にともなう調査

わかった時代: 弥生時代

遺構:

住居跡5棟、柱穴3基

遺物:

弥生土器、石鏃、砥石、磨石

遺跡特色:

第1号住居跡からは大量の炭化物、焦土(しょうど)(焼けた土)が認められた

火災により焼失した住居跡と考えられる

16.谷頭(たにがしら)遺跡(西原村)3-1-20

調査場所:

西原村川原谷頭

時代:

弥生時代中期

遺構:

円形の竪穴住居、木棺(もっかん)墓(ぼ)(木の棺、箱型に組み合わせたもの)  遺物:黒髪式土器(弥生土器の型式)、住居内から粘板岩性の多量の磨製石鏃(完成・未完成品)

遺跡特色:

石器材料の打調整から製品まで一貫した製作を行った生産集落跡

この集落のみで消費したとは考えられず、別の集落との交易材料として製作していたのではないかと考えられる

17.南鶴(みなみつる)遺跡(南阿蘇村旧白水村)3-1-06

調査場所: 南阿蘇村(旧白水村)吉田
時代: 弥生時代後期~晩期
遺構: 竪穴住居址118軒、土壙墓、環濠
遺物: 弥生土器、銅鏡、石鏃、石包丁、装身具、鉄器
遺跡特色: 遺構の状況から複数の集落が存在していたことが考えられる         出土遺物から九州各地の土器(大分・宮崎・熊本県内で使われていた土器)が集まっているので、人や物の移動がさかんであったことが考えられる
赤彩土器・丹塗土器 

免田式土器(熊本県南の土器型式)

3D映像はこちら

18.幅津留(はばつる)遺跡(南阿蘇村旧白水村~高森町)3-1-07

調査内容:

県道28号熊本高森線道路整備事業にともなう調査

時代:

縄文・弥生(中・後期)・古墳時代

遺構:

土壙墓271基、竪穴建物70軒、条溝3条、円形周溝1基

遺物:

弥生土器、打製・磨製石鏃、石包丁、石皿、磨石、台石、

イノシシ型石製品、勾玉、管玉、鉄鏃、刀子、鉄斧、

ヤリガンナ、鎌、家事関連工具、ガラス小玉類、ベンガラ

遺跡特色:

鍛冶遺構が出土し、武具、狩猟具、農具、工具などの鉄器精製を行っていた施設であったと思われる。

また北部九州地方や東九州で使用された土器などが出土していることから広範囲での地域交流が行われていたと考えられる。

阿蘇の恵みであるベンガラを媒介に各地域と交易する弥生時代のハイテク工場ともいうべき大集落が存在していた

土器出土のようす 復元後:丹塗土器
出土遺物:イノシシ型石製品   出土遺物:鉄製刀子