4-1-01 中岳のストロンボリ式噴火

0.中岳のいろいろな噴火

一言で「火山噴火」といっても、噴火にはいろいろあります。

中岳も、いつも決まった噴火をするのではなく、いろいろな噴火をします。いくつかの噴火を見てみましょう。

1.阿蘇中岳のストロンボリ式噴火

阿蘇中岳のストロンボリ式噴火

動画はこちら

イタリア・ストロンボリ火山の噴火(Wikipedia)

阿蘇火山博物館の火口カメラでとらえた2014年12月の噴火の様子です。

中岳のマグマは、ややさらさらしているので、爆発的な噴火は起こさず、打ち上げ花火のようにマグマを飛ばすのが特徴(とくちょう)です。これを、イタリアのストロンボリ火山の噴火の様子に似ているので、「ストロンボリ式噴火」と呼びます。

 

*スコリア

ストロンボリ式噴火で飛び出してくる「黒っぽい穴だらけの石」を「スコリア」と言います。マグマに含まれている火山ガスが泡となって噴き出してきた跡です。

 

2.灰噴火(はいふんか)

中岳の代表的な噴火様式の1つです。もくもくと黒っぽい煙(火山灰)を出し続けます。

*火山灰の顕微鏡写真

2015年1月29日に降ってきた火山灰の顕微鏡写真です。画面の左右の大きさが1.5mmです。

 写真のように、火山灰の中にはいろいろなものが含まれています。アメ色や黒くツヤのある粒は、新しいマグマが冷えて固まったもの、白や黄色いものは長石の結晶、そのほかは石ころのかけら(古いマグマの固まっていた石の粒)です。

 

3.爆発的な噴火(地下水が関係する噴火)

阿蘇中岳のマグマは、サラサラマグマ(玄武岩質マグマ)なので、ふつうは、ストロンボリ式噴火や灰噴火などのように、あまり爆発的な噴火をしません。

しかし、たまには爆発的な噴火を起こします。それは、おもに、地下水と高温のマグマや高温の火山ガスが接触した時に起きます。

その様子を見てみましょう。

中岳では、まれに爆発的な噴火が発生します。マグマと地下水が接触した場合には、激しい爆発が起きます。数10 cm から1mを越える噴石が、火口近くに飛んできます。これまでの100年間では、火口から約1 km 以内で大きな被害が出ています。

こうした結果を教訓として、噴火警戒レベルが2に引き上げられた時には、「火口から1㎞以内」の立ち入りが規制されます。

*巨大な火山弾

 3Dで見ることができます

高温でまだ溶けた状態のマグマが、爆発的な噴火によって空中に飛ばされると、冷えて固まるまでの柔らかい間に、空気の抵抗を受けて、きれいな紡錘形(ぼうすいけい)(鉄砲のたまのような形)になることがあります。

しかし、この火山弾は、上記の火山弾とはでき方が違います。この火山弾は、中岳の水蒸気噴火によるもので、もともと火口底にあった岩石が壊されて飛ばされたものです。ですから、溶けたマグマが冷え固まるときにできる細かい孔(くうげき)が、見られません。長い間、火山ガスの影響を受けたために、岩石の表面は黄色に変質しています。

 

4.火山活動の規則性

中岳第1火口は、静かな時には、火口湖(火口に水がたまったもの)があります。ただ、ふつうのほかの火山の火口湖と違って、温度が高く50~70℃くらい、pHは0くらいの湯だまりとなっています。

火山活動が活発になってくると、お湯の量が減って、火口の底が見えるようになります。そして、地面のあちこちから温度の高い火山ガスを噴き出し、赤く光った状態になります(火口の赤熱)。時には、火山ガスといっしょに火山灰を噴き出すこともあります。

さらに活動が高まってくると、ストロンボリ式噴火や灰噴火が発生します。また、地下水が関与してくると、水蒸気噴火やマグマ水蒸気噴火がおきます。

火山活動がおさまってくると、もとの湯だまりになります。

 

ここからは、中学生以上の生徒さんや学校の先生向けのページです。

YouTube (阿蘇火山博物館チャンネル) では、阿蘇・火山生活講座で、火山噴火について詳しいお話をしています。

 

「阿蘇火山地質図」は、渡辺先生のお仕事の中でも最も重要なお仕事です。阿蘇火山を調べつくした男:渡辺一徳の世界その2は、この「阿蘇火山地質図」について、さまざまなエピソードを加えつつ紹介していきます。

 

この研究は、渡辺先生のお仕事の中でも「阿蘇火山地質図の作成」(本講座の4で公表)についで重要な業績です。火山活動には、活発に軽石や火山灰を噴出する時期と、やや活動が低調で植物が増える時期とがあります。この植生が増える時期について14C年代測定を行い、活発な火山活動期の年代の推定が行われました。この研究により、阿蘇の中央火口丘群(後カルデラ火山群)の活動の推移がほぼ明らかにされました。この講座では、研究の内容、エピソード、気になる火山のお話などを紹介していきます。

 

阿蘇中岳の噴火活動には花火のように高温のマグマを噴き上げる「ストロンボリ式噴火」と火山灰を大量に噴出し続ける「灰噴火」が知られています。渡辺先生は、この灰噴火に注目し、火山灰を丹念に調べることで、火山活動の推移に対応して火山灰の形状が変わることを見出しました。今回の講座は、「火山灰を丹念に調べるとどのようなことがわかるか?」について紹介していきます。

 

巨大噴火(阿蘇4カルデラ噴火)の際に噴出した火山灰と普通の噴火(中岳の噴火)で降ってくる火山灰を比較してみます。同じ火山灰ですが、規模の違いで降ってくる火山灰には違いがあります。

 

火山のマグマの性質について、玄武岩ーさらさらー流れやすいーハワイのような楯状火山、安山岩やデイサイトーねばねばー流れにくいー昭和新山のような溶岩ドーム、といったことが言われており、生徒さんの間では「試験に出るからまる暗記」「地学は暗記科目」といった状況になっています。 そこで、なぜそうなの?を物の理に基づいてお話していきます。 阿蘇火山生活講座15回目は、前半に「さらさらマグマとねばねばマグマの違い」後半に「バブルウオール型火山灰」をテーマします。この動画は、前半です。

 

 

前回の講座では、「さらさらマグマ」と「ねばねばマグマ」の違いは、主としてシリカ分子の鎖のようなつながりの長い短いの違いによることを解説しました。今回は少しねばねばの安山岩マグマなのにねばねばデイサイトマグマのような溶岩ドームをつくる火山を紹介します。九重火山群や台湾の大屯火山群を例に解説していきます。

 

多くの皆さんが火山噴火予知や火山防災に関連して受け取る情報には、いくつかの先入観に基づく誤解があります。そこで「火山学の新常識」と題して、多くの皆さんが持っている「先入観」を解きほぐす動画をお送りしていきます。 今回は、気象庁が出している「噴火警戒レベル」の基準について、火山学の立場から考えていきます。

 

2024年1月23日に阿蘇山の噴火警戒レベルが2に引き上げられました。阿蘇中岳の地下で何が起きているのかについて、解説します。